2012-03-21

脱金貸し支配・脱市場原理の経済理論家たち(10)ロン・ポール

現代は市場原理に基づく経済システムが実体経済から遊離(バブル化)して、経済の崩壊の危機に陥っています。この経済システムに、過去〜現在に至るまで異議を唱えてきた経済理論家たちがいます。このシリーズではそれらの理論家の思想や学説を改めて見つめなおし、次代の経済システムのヒントを見つけていきたいと思います。
前回は、宇沢弘文氏の学説に触れました。
脱金貸し支配・脱市場原理の経済理論家たち(9)宇沢弘文
今回は、現在のアメリカで一大旋風を巻き起こしているリバータリアニズム思想家であるロン・ポール米国連邦下院議員の政治的思想に迫りたいと思います。
参考書籍:『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール、監訳・解説:副島隆彦、訳:佐藤研一郎
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【ロン・ポール米国連邦下院議員】  【参考著書】
写真はこちらからお借りしました。
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◆人物紹介
 
①生い立ち
 
ロン・ポール(ロナルド・アーネスト・ポール)は、世界大恐慌の最中の1935年8月に、ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊で生まれた。現在77歳である。両親はドイツ系の移民の子孫で、家族で牧場を経営していました。5人兄弟のうち二人は聖職者で、ロン・ポール自身も一度は神父になることを考えましたが、大学を卒業後、医者になることを決意し、デューク医科大学で医学博士の学位を取得しました。第二次世界大戦と朝鮮戦争中に青春時代を過ごしたロン・ポールは、「徴兵されてライフル銃で人を殺すなら、大学に残って医者になろうと思った」と語っています。
キューバ危機の時に空軍に徴兵されて1963〜65年まで航空医官を務めました。その後、テキサス州のレイク・ジャクソンに移り住み、産婦人科医として4000人の赤ん坊を取り上げます。彼には妻のキャロルとの間に5人の子供、18人の孫と1人のひ孫がいます。次男がランド・ポールです。(2010年11月の中間選挙(ミッドタームエレクション、アメリカの統一地方選挙)でランド・ポールはケンタッキー州の上院議員に当選しました。
ロン・ポールは、1971年にニクソン大統領が、米ドルの金との兌換の停止を宣言した「ニクソンショック」のときに政治家になることを決心しました。
彼は学生時代からオーストリア学派の経済学(これがリバータリアニズムの源流の一つ)を好んで読んでいました。オーストリア学派は、政府による経済統制を批判しています。中央銀行が恣意的に金利や通貨量を決めることで、好況と不況を上手にコントロールできると考えた者たちを強く批判しています。
その後、彼は下院議員として12期(24年)もの長きに亘って政治活動をしています。1988年には、大統領選挙に第三の政党であるリバータリアン党から立候補して、43万票を集めて第三位となりました。
彼の議会でのあだ名は“ドクター・ノー”です。それは、ロン・ポール自身が、たとえ連邦議会の他の議員全員が賛成しても、合衆国憲法の精神に従っていなければ、一人ででも反対票を投じてきたからです。たった一人で反対票(NO)を投じた回数は、他のすべての議員が投じた反対票を合わせた数よりも多いといいます。まさに、筋金入りの「憲法遵守主義者」なのです。
 
②リバータリアン政治家、ロン・ポール
 
アメリカ合衆国の現職の連邦下院議員、ロン・ポールは、今のアメリカの国内政治の中で、「グローバリスト(地球支配主義者)」と戦っている数少ない「リバータリアン政治家」です。リバータリアンとは、「政府はできるだけ小さな権限を持つべきだ。人々の自由は、他人に迷惑をかけなければ、最大限認められるべきだ」と考える人々のことです。
この思想は、国王の権力を打ち倒して人々に自由を与えた自由主義の思想の一種であり、その末裔です。この思想が今、アメリカで大きく台頭しつつあるのです。
 
③ティーパーティー運動の火付け役、ロン・ポール
 
ティーパーティーとは、保守派の草の根の運動のことをいいます。この名前は、アメリカの独立戦争のきっかけになったボストン茶会事件(ボストン・ティーバーティー、1773年)にちなんでいます。
当時、イギリスの植民地だったアメリカ人たちは、自分たちはイギリスに代表を送れないのに、イギリスが勝手に自分たちに税金をかけることに対し、「代表なければ課税なし」と猛反発しました。この反税運動が、アメリカを独立に導いていったのです。
現代のティーバーティー運動は、当初ロン・ポールの支持者たちが始めた彼の大統領選挙戦の資金集めのためのイベントでした。彼の支持者たちは、1日で600万ドル(約5億円)を集めメディアの注目を引きました。ボストン茶会事件を記念して、「大きな政府、増税、連銀」と書いた茶箱を、ボストンの港から海に投げ込むパフォーマンスで話題となりました。
それがいつの間にか、草の根の保守派の団体として広がっていったのです。アメリカ人が一番嫌いな確定申告の締切日である4月15日の納税日にあわせ、ティーパーティーと名乗った反税金のイベントが全米で行われるようになっていきました。2009年の納税日にも100万人が集まった大規模なデモがありましたが、当初メディアは、あまりこの運動を注視せず、得体のしれない人たちが集まって反オバマの運動をしているという程度の認識でした。
しかし、2010年1月に行われた連邦上院議員補欠選挙で、民主党の牙城といわれるマサチューセッツ州で、民主党の議員がティーパーティーに支持された共和党の候補者スコット・ブラウンに敗れるという事態が起きました。メディア(テレビ・新聞)がこの運動を無視している間に、ティーパーティーは二大政党を脅かすほどの政治団体に成長していったのです。
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【写真:ティーパーティー】
写真はコチラからお借りしました。
 
 
それでは、ロン・ポール下院議員の主張・思想をみてみましょう。
以下、『他人カネで生きているアメリカ人に告ぐ』から紹介します。
 
◆合法的な略奪
 
・「政府による課税=合法的な略奪」の影響力の大きさ
 
前述したように、ロン・ポールはリバータリアン政治家として真の自由主義を訴え、経済・人々の私生活における政府の介入は最小限に抑えるべきだと主張します。まず、ロン・ポールがこの政治思想を実現するために、現在壁となっているものが何なのかをみていきたいと思います。

「経済の自由」なるものは、実に簡単な道徳の原則からなりたっている。
誰でも、生きる権利と財産権を持っている。そして誰も、他の人のこの権利を侵す権限を持っていない。どんな人でも、この原則を受け入れている。
〜 中 略 〜
ころが、政府がすると、みなが納得するところの道徳的な行動になってしまう。人々から税金をとることは、窃盗と同じなのである。
私たちは、政府が自分で勝手に決めた道徳的なルールによって、政府が運営されることを渋々と認めてきた。フランスの偉大な政治学者であり経済学者のフレデリック・バスディアは、これを「合法的な略奪」と呼んだのである。
〜 中 略 〜
社会福祉のように、政府が行えば問題なく受け入れられるのに、個人がやったら道徳的に許されない。この考えを、やめてみたらどうだろうか。
政府を利用して、他の人々のお金(即ち、税金)を使って豊かになるのは合法的とされる。
これがバスディアのいった「合法的な略奪」の意味である。
〜 中 略 〜
政府は誰かから税金でお金を集めて来なければ、誰かの為に1セントも使うことは出来ない。そして政府が集めてくるお金は、人々が一生懸命に働き蓄えてきたものだ。税金とは国家による泥棒なのである。この重要な事実が、すっかり忘れ去られている。そしていつものように政府内では、かわいそうな特定の人々や業界を助けるべきだという議論が始められる。この議論から置き去りにされているのが「忘れ去られた人々」、つまり税金を取られるばかりの人々なのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


更に、大衆が政府という組織に搾取されるその具体的な事例を語ります。

現在、最大で福祉予算の70%が、官僚機構の運営費として使われているのである。そのうえ、政府の事業は地方や民間の援助に比べて簡単に悪用されてしまう。誰も責任を取らず、問題がしっかりと考慮されないままに巨額の資金が動く。だから、社会にとって害悪になることが多いのだ。
多くの政府の事業が中間層や貧困層のためにと設けられている。しかし「合法的な略奪」を基礎にしているシステムが、どうして中間層や貧困層のプラスになるのであろうか。
毎年、特定の業界が特権を獲得し維持するために、一人数百万ドル(数億円)というお金が議会ロビイストに惜しみもなく費やされる。彼らの行動は、すべての商品を割高にする。その結果、企業は効率や競争力を失い、最終的に経済を停滞させる。政治的に影響力があり政府と手を結んでいる人物が、特別な権利と、政府からの略奪品を手に入れる。それに比べて中間層や貧困層の政治的な影響力は決して大きくない。
政府が掲げるさまざまな政策は、最終的には貧困層からの略奪に行き着いてしまう。それなのに、そのような政策が貧困層のためだと当然視されている。このことを、私は全く理解できない。そして政府はこの略奪のツケを、紙幣を勝手に増刷することと、インフレを起こすことで支払おうとする。そうすると、社会でもっとも弱い層を不当に痛めつけることになる。こうして、「政府の介入が社会でもっとも弱い層の助けになっている」という意見は、完全に崩壊するのだ。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


ロン・ポールは、政府が何をするにも国民から金を巻き上げる組織であることに不満を抱いています。
何人も政府の力を利用して他人のお金を略奪することをゆるされてはならないと強く訴えており、自分達の財産の使い道は自分達で選択できるという意味での「自由な経済」を目指している政治家です。
 
・提案〜自由な経済を実現するために〜
 
また、ロン・ポールは大衆から搾取する政府という構造が肥大する以前のアメリカの姿を語り、当時の魅力を説きます。
そして、元の姿へ戻るべきだという考えの基で、数々の改善策を提案しつづけてきました。

19世紀中頃に、フランスの優れた思想家のアレクシス・ド・トクヴィル(1805〜1859)がアメリカを訪問した。彼は出来たばかりの若い国のアメリカ人が、共通の目標を達成するためいかに多くのボランティアの協会を作ったかに驚き、それを書き残している。「この国には多種さまざま、数えきれないほどの協会があるが、政治団体がその一つの特徴である。フランスで何か新しい事業を興そうとすれば政府とまず交渉することになる。それに対してイギリスでは、まず身分の高い貴族に挨拶に行く。アメリカでは、間違いなくあなたが必要とする教会を見つけるだろう。」
アメリカ人は、かつて一般の人々の努力で共通の目標を掲げ、それを達成しようとした。しかもそれをボランティアで自発的に成し遂げてきた。トクヴィルは、そのアメリカ人の優れた能力を賞賛したのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


建国初期には、自立した地域共同体とそれをまとめる協会の存在が、アメリカの原風景でした。

民間自身による貢献は、芸術のような分野だからうまくいくのかもしれない。だが、政府の巨大な予算を使う社会福祉などの分野では難しいと反論する人もいるだろう。しかし民間による援助ならば、政府援助ほど大きな予算を必要としない。
〜 中 略 〜
私は、所得税の廃止について訴え続けてきた。増税法案にも反対票をいつも投じてきた。その間、国民に対する膨大な課税を少しでも減らそうと、多くのケースで所得税や他の課税を免除する方向に最善を尽くしてきた。
例えば、収入の大半をティップ(こころづけ)によって得ている人に、ティップから所得税を取らないように提案した。教師に対する税金の控除を提案した。難病患者からの社会保障税の免除を提案した。今日一日をいきることで精一杯の人から税を取ることは道徳的ではない。しかし、もっとも大切なことは、所得税の全廃に向けて私たちが努力していくことである。初速税の代わりに連邦消費税などの新しい税金を設けるのではなく、ただ全廃することだ。
現在、連邦政府の予算は、物品税、法人税、賃金税、所得税、その他の収入から成り立っている。「所得税を廃止すると、政府の収入がおよそ40%減ることになる。なんと過激な主張だ」という批判を、今までに私は何度も受けてきた。確かに私たちが見慣れて知っている、遅々として変わらない政府と比べれば当然だろう。しかし本当に、所得税の廃止が過激な主張なのだろうか。2007年の連邦政府の予算を40%削減した時代とは、いつまで歴史を遡ればいいのか。
答えは、わずか10数年前の1997年である。
もう一度、1997年の頃の生活に戻すことは、それほど難しいだろうか。それよりも所得税を廃止すれば、経済は劇的に力強さを取り戻すだろう。私の楽観的な予想すらも軽く超えるだろう。所得税廃止は、現行の税制の背景にある全体主義的な考えときっぱり決別することも意味するのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


ロンポールは、連邦政府の課税を縮小することによって、米国民が建国の精神に回帰することが出来ると主張しています。
 
 
◆経済を閉塞へ追いやった連邦準備制度理事会(FRB)
 
・連邦準備制度理事会(FRB)のからくり
 
ロン・ポールは、FRB廃止を強く訴えている一人としても有名です。マスコミから報道されるFRBの政策はいつも「景気回復のための金融政策として・・・」の一点張りで、それ以上語られることはありません。政策の中身を語らない特権階級(政治家・マスコミ)と、それを鵜呑みにするしかない一般大衆という構図に憤りを顕わにし、FRBの騙し構造(からくり)を語ります。

「連邦準備制度理事会議長が利下げを発表した」というのは毎回大きなニュースになる。それではこのニュースが何を意味するのか、読者の皆さんは正確に理解しているだろうか。連邦準備制度理事会で決定される金利は、正式にはフェデラル・ファンド金利(日本語では政策金利)という名称である。フェデラル・ファンド金利を一言で説明すると、銀行がお互いにお金を融通し合う際に使われる金利である。
銀行は貯金の一定割合を準備金として連邦準備制度に預けることを義務付けられている。これは、銀行が資金をすべて貸し付けてしまうのを防ぎ、顧客がいつでも貯金を引き出すことを可能にするためだ。銀行が大量の融資を一度に行なったり、想定以上の数の顧客が一度に銀行から貯金を引き出したりすると、銀行は連銀の定める準備金を確保できなくなる。そこで銀行は互いに現金を貸し借りして、準備金に必要な現金を確保するのである。
政策金利が上昇するのは次の場合だ。お金を借りたい銀行が多く、お金の需要が高まっている中で、お金を貸し付けたい銀行が少なく、お金の供給が少ないときである。このような事態になると、連銀は政策金利が上昇するのをすかさず阻止しようとする。連銀は政策金利を直接設定することはできないが、経済に介入することで金利を押し上げたり、押し下げたりできるのである。連銀は銀行が保有している株式や国債なのどの有価証券、すなわち国債を買うことで、金利を押し下げることができる。銀行はより多くの現金が手元に残り、他の銀行に貸し付ける必要な現金を準備できる。そのため市場には、他の銀行への貸し付け資金の不足が減ることになり、政策金利が低下することになる。
連銀が、銀行から債兼を買うお金はどこから来るのだろうか。実は連銀は、何もないところからお金を生み出すのだ。単純に小切手に金額を書き込み、それを銀行に渡すだけである。
〜 中 略 〜
では、この連銀の動きが、どのように金利を下げることにつながるのだろうか。連銀が銀行から債権を買い取ったおかげで、銀行の手元には、他の銀行や企業、個人などに貸し付ける余分な資金ができる。新たなお金の借り手を惹きつけるために、銀行は貸出し金利を下げて、貸し出しの基準を下げ、審査を緩くする必要が生じるのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


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【連邦準備制度理事会(FRB)】
写真はコチラからお借りしました。
また、彼はFRBの市場への介入が、結果的に人々の生活を圧迫すると指摘します。

このおように連銀が金利市場に介入するとき、何もないところから人為的にお金と貯金が作り出され、通貨供給量(お金の総量)が増加する。これが、さまざまな経済的な問題を引き起こす。通貨供給量の増加はドルの価値を低下させるため、貯金や給料の価値を目減りさせ、人々の生活を相対的に圧迫する。そして短絡的には通貨供給量が増加したため、新たなお金の借り手が増え支出が増加するために、景気が刺激されたように見える。しかし長期的には、人為的な刺激策は、経済に悪影響を与える。このようなニセの繁栄は、将来の経済危機や不景気の直接の原因になるのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


また、経済バブルの原因は、この通貨供給量の増加にあるとロン・ポールは言います。

〜 前 略 〜
政治家たちは株式市場の大幅な下落を嘆き悲しんだが、連銀が作り出した通貨の拡大がバブル経済を生み出したという事実を少しも理解しようとしなかった。その代わりに議員たちは「投資家を間違った方向に導いた」と経済アナリストたちを批判した。しかし連銀と比べれば、経済アナリストの責任など、大河の一滴でしかない。連銀は過去10年間、景気調整の兆候が現れるたびに金利を人為的に下げてきた。金融市場に惜しげもなく新しいお金を洪水のように不良債権や不良投資、過剰設備の清算や解消を遅らせ、金融バブルをさらに拡大させて、最終的にバルブ崩壊の傷跡をより深いものにしたのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


70年以降のバブル経済は「時代の恩恵」と表現されたりもしますが、1990年代以降の米国経済の拡大は、FRBと政府による無尽蔵な紙幣の発行によるものでした。人々の意識潮流を掴もうとせず、ムリヤリに市場を拡大した結果が今の経済崩壊を招いてしまったのです。
 
・提案〜実物を取引の媒体として使う権利を復活させよ〜
FRBのからくりを見抜いたロン・ポールは、政府・FRBのような小手先の経済政策ではなく、根本から通貨制度の検討のし直しを提案します。

連銀は「アメリカの通過制度は世界で最も優れている」と言い張っているが、日に日にドル崩壊の危機が増し、事態は切迫していきている。現在のアメリカには、今までとは違う通過制度が必要とされている。先入観を取り除き、理にかなった通貨制度を再検討し、導入することである。
簡単に実行に移せる最初のステップとして、通貨の競争を法的に認めることだ。つまり国民が、金や銀などの実物を取引の媒体として使う権利を復活させるのだ。私たちが自由を信じるのであれば、これがもっとも簡単で道理にかなった第一歩と言えるだろう。金や銀を取引に使うという選択肢によって、国民は今の通貨制度から抜け出すチャンスが与えられ、金融危機から自分自身の身を守ることが可能になるのだ。このことが非常に重要である。もし価値が減り続けていくドル紙幣を使いたいという人がいれば、その人は今まで通りドル紙幣を自由に使えばいい。しかし政府が紙幣の印刷機を回し過ぎたがために価値が無くなってしまうような通貨を好まず、長期間にわたり価値が保障される通貨を望む者には、金や銀に裏づけされた通貨は現実的な選択肢である。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より

 
ロン・ポールは、複数の通貨による競争を考えます。金貨・銀貨が通貨として流通することでFRB発行のドル紙幣に信認圧力がかかることを考えています。
 
◆歴史上、もっともいいかげんな戦争
 
・イラク戦争の事実
 
戦争は軍需産業ともいい、アメリカを財政的に支える主要な産業のひとつでもあります。戦争をすれば儲かる仕組み(今回は割愛)を作り出し、世界の平和という建て前で数々の国に送兵しているのです。
それが露骨に表れたのがイラク戦争だとロン・ポールは言います。

イラク戦争は、アメリカの歴史上、もっとも不適当で、いいかげんに計画された戦争であった。そして最初から全く必要のない軍事衝突であり、私は当初から明確に反対を表明していた。当初というのは2002年や2003年ではない。私が言っている当初とは、1997年から1998年にかけてで、クリントン政権がイラクで新たな動きを開始しようとしていた時期である。
〜中略〜
その後のブッシュ政権の方針の起源はここにある。当時、クリントン政権に対してイラクに侵攻するように要求していた人々は、その後、ブッシュ政権になっても同じ要求をした。彼らは、911のテロという悲劇を利用して国民を扇動し、イラク信仰という長年の野望を実現させたのである。侵攻の理由は、大量破壊兵器でも、サダム・フセインとアルカイダとのつながりでも、邪悪な独裁者フセインでも、何でもよかったのだ(実際、80年代に多くのアメリカの政治家がフセインを支援していたことなど、まるでお構いなしだった)。彼らの中東での野心が満たされれば、人々がどのように戦争に駆り立てられていくかなど、さほど重要ではなかったのだ。
〜中略〜
イラクはもちろんアメリカを攻撃していない。フセインの力は効果的に封じ込められていて、誰に対しても脅威ではないと、コンドリーザ・ライスやコリン・パウェルなどアメリカ政府の高官ですら発言していた。そしてフセイン政権は世俗の政権であり、イスラム政体でさえもなかったのである。しかし戦争プロパガンダによって、これらの事実は見事にねじ曲げられてしまった。
〜中略〜
イラク戦争の場合、イラクはアメリカを攻撃すらしなかった。アメリカはイラクから約一万キロも離れている。私たちが聞かされた「奴らがやって来てアメリカを攻撃する」という話は、臆病者の作り話である。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


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【イラク戦争】
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・提案〜戦争における大義の重要性を見失ってはいけない〜
 
やはりここでも正義の戦争とは「本来どうあるべきか」、先人が残した教えを守ることの重要性を説きます。

このような騒動の中でも、私たちは戦争における大義の重要性を見失ってはいけない。キリスト教の神学者に始まり、その後は世俗の学者たちが延々と何世紀にもわたって、戦争遂行を阻止しようと努力してきた。千年以上前からキリスト教には、何をもって正義の戦争と呼ぶかという定義や教義が存在している。
〜後略〜
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より


正義の戦争の必要条件:
・最初に他国が攻撃的な行動をとらなくてはならない。
・外交を通じた解決策が、すべて出尽くしていなければならない。
・正等な権限をもった者が戦争を開始しなければならない。そして、その権限は下院議員にある。

(注)連邦政府の外交方針(軍事介入を含む)は上院の承認を必要とするが、国民の真の代表は、下院議員であると考えています。 
イラク戦争では、戦争をしてもよいこれらの条件を全て無視し(正確には捏造した)侵攻しました。
全ては軍需産業で潤うために、他国を侵略し(石油などの)権利を略奪してきたのです。
 
・提案〜建国の父たちはこう教えたはずだ(不干渉主義の外交方針)〜

アメリカ建国の父たちは、真に優れた外交方針の理念を残している。トーマス・ジェファーソン(1743〜1826)は、第三代大統領の就任演説で次のように述べた。
「すべての諸外国との平和、通商、信頼し合う友情関係を保ち、他国の問題に巻き込まれるような同盟関係を、どの国とも結ばない」
その数年前、初代大統領のジョージ・ワシントン(1732〜1799)は大統領三戦を辞し、公的生活から引退することを表明した告別演説の中で、その後のアメリカが取るべき進路を次のように述べている。
 「すべての諸外国との調和と自由な貿易は、政策、友愛、国益の観点からみて、積極的に進めるべきである。しかし貿易上の政策においては、常にその公平さを保たなくてはならない。そして独占的な待遇や優遇を決して許してはならない。優れた外交方針は、諸外国との通商や貿易を広げながら、できる限り政治的なつながりを持たないことである。なぜ自国の平和と経済的繁栄を犠牲にしてまで、ヨーロッパの野望、競争意識、利益、世論や気まぐれに、巻き込まれなければならないのだろうか。」
私たちは建国の父たちの時代に生きているのではないのだから、彼らの助言は今ではもう役に立たないという意見を耳にすることがある。だが、このような陳腐な論理に対して、さらに他のあらゆる理念原則にさえ、建国の父たちがのこしてくれた助言を用いれば、たやすく反論や説明ができる。
時代が変わったからといって、言論や宗教の自由を定めた憲法修正第一条を改正すべきだろうか。その他の基本的人権もすべて廃止するべきだろうか。現在の愚かな政策を正当化するために都合のいい屁理屈が必要だからと、建国の理念を簡単に捨て去ってしまうのは愚かであり、子供じみている。憲法に正式に記されている原則は、いまだに変わっていない。それどころか現在の複雑な世界情勢においては、建国の父たちが掲げた不干渉主義の外交方針の、はっきりとした道徳的な明快さがなおさら必要なのである。
 
(『他人のカネで生きているアメリカ人に告ぐ』著者:ロン・ポール)より

 
ロン・ポールは、米国の正義は「軍事力を使って世界の国々に介入することではない」と論じます。
 
◆最後に
 
ロン・ポールが掲げる政治的思想には、真の自由主義への追求が根底にあります。彼がいう自由とは、何でも個人の好きなようにという子供じみた幻想ではなく(市場を支配する一部の層はこれに該当するが)、国民が自分達の財産を自由に使える可能性を確保することだといえます。税収という合法的な略奪や、政府・FRBの市場介入による最終的な末端への経済的圧迫が起きるのは、一部の層のみが金を儲けられるシステムが基盤となっているからで、真の自由経済とはいえません。
 
さらに、そういった一部の金持ち層は、彼らの私権獲得を妨害しようとする勢力(ロン・ポールやティーパーティー)は何としても排除しようとします。市場拡大主義のマスコミも勿論、ロン・ポールやティーパーティーの動向に関して無視や批判などを繰り返しています。
 
しかし、時代は私権原理から共認原理へと変わりました。身分やお金といった私権を獲得することに萌える世代とは違い、新しい価値観をもった若い世代が次代を担おうとしています。20代の若者には、ロン・ポールの「真の自由主義」という思想、「ドクター・ノー」という名の通り、おかしな政策に対して徹底して反対票を投じる姿は輝いてみえ、ロン・ポールは彼らから絶大な支持を得ています。
 
また、近年インターネットの普及により、支持者によるYOUTUBEなどのインターネットメディアでの拡散運動が爆発的に拡大しています。草の根ともいえるロン・ポールの政治活動は、今後共認収束が進むにつれて、ますます加速してゆくでしょう。
彼のようなリバータリアン政治家が新しいアメリカの大統領となり次代の経済システムを切り開いていくことを願ってやみません。
 
 
次回は、貧困問題をムハマド・ユヌス氏の学説扱ってみたいと思います。

List    投稿者 kuwamura | 2012-03-21 | Posted in 07.新・世界秩序とは?No Comments » 

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